夏の風物詩、暗闇に舞うホタルの光を追う:蛍観察体験記

もう何年もホタルを見ていないという人は、とても多いです。

私もホタルを見た記憶があるのは20代までです。

今年の6月には、2度、ゲンジボタルを観ました。

実に40数年ぶりのホタルとの再会です。

今やホタルを観るのは、心して見に行こうと決意しない限り、難しくなってしまいました。

でも、その気になりさえすれば、あなたの前にホタルは現れます。

「ホタル観察会」に参加するのも、一つの方法ですね。

ヘイケボタルは7月に入った今から出会うことができそうです。

当記事では、この夏、蛍の光を追う私の蛍観察体験記を紹介しています。

 

目次

40数年ぶりのホタルとの再会

「今年の夏にやりたいこと」を以前の記事で書きましたが、その一つに「ホタルを見る」と言うのがあります。
自然豊かな田舎で育った私は、夏になると当たり前のようにホタルが光っているのを近くで見てきました。
あの頃の夜は、月明りと星の光以外は照らすものがなく、真っ暗闇でした。
夏の蒸し暑さを凌ぐために、夜は縁側の板戸を開け、縁側に続く奥の畳部屋を隔てる障子戸も少し開け放して、その部屋で蚊帳を吊って寝ていました。
蚊帳の中の布団に横たわっていると、部屋にホタルが入ってくるのです。
子供だった夏の夜は、ホタルの光を見ながら眠りについたものでした。
20代の頃、仕事帰りのアパートまでの帰り道は、周り一面が水を張った田んぼだったので、先々でホタルが飛び交っていました。
もう一度ホタルを観たいという思いが、60代の今になって強くなり、ついに見に行くことにしたのです。

盛岡城跡公園内の「ホタルの里」でゲンジボタルを観察

6月22日の土曜日、一人でも出かけやすい盛岡城跡公園内の「ホタルの里」を訪れました。
岩手公園は、盛岡市の街の中心部にある公園で、夜でも近くの市民が涼を求めて家族連れで散歩をしたり、犬を散歩させたりして、人通りが多いので安心です。
歩道にも所々、街頭が設置されて治安もいいです。
広場では、8月初めに開催される「さんさ踊り」の太鼓の練習中のグループも居ました。
熊が出る心配もありません。
夜7時半頃から、「ホタルの里」の小さな川のそばに行ってみました。
その小さな川とは、公園内の外縁の鶴が池から中津川に流れる清流です。
周りには楓の木々が密集して、街明かりもある程度遮られ、静かな暗闇に包まれていました。
じっと待つまでもなく、そこにホタルは飛んでいました。
1頭、2頭、3頭、と川のそばの低いところで光っています。
見ていると、川の向こう岸から、こちら側の方にも飛んできました。
光は4秒ぐらい光った後またしばし消えて、再び光ります。
これだけのことなのですが、とても感動しました。
蛍の光と共に、ホタルのいた夏の思い出が蘇ってきます。
すぐそばには先客の若者が、じっと一人でホタルを見つめていました。
この若者にもホタルの思い出はあったのでしょうか。
まわりにも、見に来た人が数人いました。
夜8時を過ぎると、数も増えています。
10頭以上はいました。
ただ、狭いエリアで、街の明かりもうっすらと届くことから、群れ飛ぶというほどの数はいませんでした。
でも、久しぶりに見たホタルの光は美しく、ゆったりと思いにふける静かなひと時を過ごせせました。

(動画をじっと見ていると、数は少ないですが、ホタルの光が点滅している様子がわかります。)

滝沢市大崎「ホタル観察会」でゲンジボタルを観る

 

蛍観察会の様子

6月28日金曜日は、滝沢市大崎にある蛍観察会会場に車で出かけました。

盛岡市街にある「ホタルの里」とは違い、岩手銀河鉄道の踏切を超えて、奥の方まで行った暗闇の林の中に会場はありました。
集合場所に行くと、結構人が集まっており、50人近くもいたでしょうか。
参加者も子供連れの家族、20代や30代の男女、中高年と様々です。
夜に、こんな何もない暗い奥まった場所に、たくさんの人々が集まるのは、「幻想的なホタルへの憧れ」や「一度は見てみたい」という願いの表れなのでしょう。
特に子供を連れてやってきた親達は、子供にホタルの存在を知ってほしいという思いがあるのではないでしょうか。
このホタル観察会の主催は、「たきざわ環境パートナー会議 いきもの探検隊プロジェクト」です。
案内人の男性が、ホタルについての興味深いお話をして下さり、その後、案内人の明かりだけを頼りに、皆で列を成してホタルのいる所までついていきました。
右手には、川のせせらぎの音が聞こえ、左手は小高い暗い林の丘に続く斜面です。
川沿いに下りる段差がある曲がり角では、係の女性が懐中電灯で足元を照らしてくれました。
歩いている途中で、「あっ、光った!」、「ほらほら、見て見て、いたよー」とあちこちから声が聞こえてきます。
子供たちの驚きは特に大きかったようです。
普段見ない小さな光が暗闇の中で舞っているなんて、すごいことです。
しかもバーチャルではなくリアルなんですから、子供たちにとってはとても貴重な体験ですよね。
時間が経つほどに、ホタルはだんだん低いところから、高度を上げてきて、頭上や目の前を飛ぶようにもなりました。
参加者の足元近くに着地して、じっと光っているホタルもありました。
ホタルは人間を恐れないのですね。
夜8時から9時までの1時間がゲンジボタルの活動が活発な時間帯で、この時間を私達はホタルの光を追いながら移動して歩きました。
少し慣れてくると、自分一人で、蛍のいる場所に移動してゆっくりと観賞もできました。
やはり、大勢の集団の中でホタルをじっと見るよりは、短時間でも、静かにホタルと自分だけの時間を持ちたいものです。
それを可能にしたのは、少し離れたところに人がいるという安心感です。
さすがに盛岡城跡公園の「ホテルの里」とは違って、ここはとても夜に一人で来れるところではありません。
鬱蒼とした漆黒の森の中で、熊が出てきてもおかしくないような場所でした。
だからこそ、ホタルがたくさん棲める環境にもなっているのでしょう。
こういう環境でさえも、ホタルをたくさん呼び戻すには、クモの巣にホタルが引っ掛からないように草刈り作業をしたり、川のホタルの餌を研究してホタルが食べれるような環境を整えたり、ホタルの生息条件を確保するための人間の努力が続けられていた事実もわかりました。
こういう方たちの影の支えがあって、ホタルの幻想的な光を愛でることができたのです。
感謝しかありません。

ホタルについて知る

ホタル観察会では、案内人のおじさんが、ホタルについて自作の模型などを使いながら、分かりやすく教えてくれました。
参加者には画像付きの一枚の資料をくれたので、その内容を紹介しますね。
(滝沢環境パートナー会議 ホタル探検隊)

ホタル探検隊資料からホタルについて学ぶ

ホタルは、日本全国各地に生息しますが、ここでは岩手県滝沢市のホタルについての紹介となります。

ホタルはどこにいる?

ホタルは自然が豊かなところに生息しています。

滝沢市にはその名の通り(滝と沢ですもんね^-^)、川や池などの水辺が多く、水生のゲンジボタルとヘイケボタルの生息地が所々にまだ存在しています。

私の住む地域でも、昨年夏に蛍観察ツアーを行っていましたね。(その時は機会を逃がしてしまったので、残念に思っていました)

ホタルの種類と特徴(「たきざわのホタル」資料より)

(画像もこの資料から引用しています)

ゲンジボタル

・赤い胸に黒い十字の模様(模様が薄いものもある)

・体長13㎜~15㎜(大きい)

・長い周期でゆっくり点滅(2秒~4秒)

・光る時期 6月下旬~7月下旬(滝沢市)

・苔に500個ぐらい産卵

・幼虫はカワニナという巻貝をおもに食べる

・幼虫のときは10ヶ月~2年くらい水中で生活

ヘイケボタル

・赤い胸に太くはっきりとした黒いたて線

・体長8㎜~10㎜(小さい)

・チカチカとはやく点滅

・光る時期 7月上旬~8月中旬(滝沢市)

・苔や草の根元に100個ぐらい産卵

・幼虫はモノアラガイやタニシなどの巻貝を食べる

・幼虫は冬を越し翌年成虫になる

ヒメボタル

・幼虫は陸生の巻貝を食べます

・森の中で輝く小さなホタル

・岩手山の裾野の森などにいる陸生ホタルの代表

ホタルの餌に関しては、近くの岩手県立大学の学生さん達の研究観察によると、他にミミズなども食べていたことも分かったそうです。

話を聞きながら、雑食しても必死に生き延びようとする健気なホタルの姿が浮かんできました。

ゲンジボタルとヘイケボタルの見分け方

赤い胸の模様で見分けます。黒い十字がゲンジボタル。太く黒い縦線はヘイケボタル。

光の点滅ではゆっくりピカ~ピカ~と光るのがゲンジボタル。せわしなくチカチカ光るのがヘイケボタル。

オスとメスの見分け方

空中を飛び回って光っているのは全部オスですから、メスを見かける機会は少ないのですが、メスも草むらなどで光りながらじっとオスを待っています。

しかし、オスよりも腹部の発光器の節の数が1つ分足りないため、光は弱くなります。


ゲンジボタル、ヘイケボタル、ヒメボタルの3種共に、発光器の節の数でオスとメスを見分ける事ができる。

腹部の白い部分が発光器。オスは2節メスは1節です。


ホタルの一生

・ゲンジボタルの一生


ゲンジボタルの幼虫は、おもに巻貝のカワニナを食べて成長します。カワニナがたくさん棲む川で増えます。脱皮を繰り返して大きくなると、滝沢市では5月上旬か6月下旬の夜に上陸し、岸辺の土の中に蛹室(ようしつ)をつくりサナギになります。1か月ほどして羽化し、成虫となります。

羽化した成虫の命は短く、1週間から2週間ほどです。
この時期、産卵に至らないうちにホタルを捕獲すると、個体数が減るのでやめるように言われています。

まとめ

念願のホタルとの再会を果たして、今年の夏は特別なものになりそうです。
まだ、これからもヘイケボタルの観賞ができますので、今度は五所湖公園内にある「尾入野湿生植物園」にも出向き、ヘイケボタルの観賞を楽しんでみようと思います。
説明にもあったように、せわしなくチカチカと光って飛ぶのでしょうか。
今回の2度にわたるホタル観察では、多数のホタルがあたり一面に群れ飛ぶという様子ではなく、あちらこちらで光っているという感じでしたが、次回の湿生植物園での様子はどうでしょうか。
もう少したくさんのホタルを見れたらいいのですが。
場所によって、出方に違いもあると思うので、よく観察してみます。
最後に、滝沢環境パートナー会議のメッセージを紹介してこの記事を閉じます。

昔は地域の至る所にホタルがすんでいました。
しかし、街づくりが進むと共に、ホタルの生息地はどんどん少なくなりました。
このままではホタルがいなくなってしまいそうです。
特にゲンジボタルの生息地には、ミズバショウやサクラソウ、トンボやゲンゴロウなど豊かな自然が多く残されています。
滝沢市を、豊かな自然と共生する街にしていきましょう。私たちと楽しみながら、ホタルの保護増殖をしてみませんか。
環境パートナー会議 ホタル探検隊

 

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