岩手の初夏の風物詩:「チャグチャグ馬コ」を紹介

6月初旬。岩手は田植えの季節です。

本日8日は初夏の訪れを告げる「チャグチャグ馬コ」のパレードを見に行ってきました。

田園地帯の道端には紫のアヤメが咲き誇り、晴れ渡った空から降り注ぐ陽光が田んぼの水にキラキラ反射して美しいです。

「チャグチャグ馬コの唄」にのせて、蹄の音がパッカパカと重なり、馬コに着けた鈴がチャグチャグとあちこちで鳴ります。

色彩豊かな装束に身を包んだ馬コ、61頭。

絣(かすり)の着物に編み笠の娘たち、馬の背中で手を振るかわいらしい子供たち。

見ているだけで、心洗われ、思わず微笑んでいる自分に気づきます。

やっと岩手にも夏が来ました。

今回は、この初夏の風物詩、「チャグチャグ馬コ」について紹介します。

目次

初夏の風物詩:チャグチャグ馬コとは

南部盛岡の初夏を彩る伝統行事

「南部盛岡」チラシ:盛岡市観光課内の「チャグチャグ馬コ保存会事務局」「チャグチャグ馬コ振興協賛会事務局」が発行したチラシの表紙

チャグチャグと鈴の音を響かせて、色鮮やかな装束で着飾った農用馬が、滝沢市の鬼越蒼前神社から盛岡市の盛岡八幡宮までの約14kmの道のりをおよそ4時間かけて行進する伝統行事「チャグチャグ馬コ(うまっこ)」。

岩手県は全国有数の馬産地として名を馳せ、南部曲がり屋の茅葺き屋根の下で家族の一員として「馬コ(うまっこ)」を大事に扱ってきました。

馬にちなんだ端午の節句に馬の守り神である「鬼越蒼前神社」へお参りをする「オソデマイリ)」をして、農耕に疲れた愛馬の無病息災を祈ったのが、チャグチャグ馬コの起源です。

(途中略)・・・

世界的にも類を見ない農用馬のパレードは、文化庁から無形民俗文化財に指定されている他、チャグチャグという鈴の音は環境省の「残したい日本の音風景100選」に選定されています。

出典:チラシ「南部盛岡」(盛岡観光課)

 

およそ4時間かけ神社から神社まで行進するなんて、大変そうですね。

特に馬の背にまたがる子供たちや娘さん達、子馬たちはキツそうです。

暑いときもあれば、途中雨に降られることもあります。

それで、沿道でパレードを見に来ている人達は、写真を撮るだけでなく「大変ね。頑張ってねー。」と励ましの声をかけるのです。

馬コの引き手や、馬上の人達、馬糞を片付ける清掃カー、交通整理のおまわりさん、みんなが力を合わせて、この伝統行事を守っています。

チャグチャグ馬コの装束

・各部所の説明

出典:https://chaguuma.com/costume/

色鮮やかな装束を身に纏い、鈴の音を響かせ行進するチャグチャグ馬コ。

鈴の数は1頭あたり700個と言われています。

江戸中期、お詣りが盛んになるなか で愛馬を着飾る文化が流行しました。

装束の作り方は家々で異なり、代々受け継がれたものです。

現在は、作り方の講習会を農作業の落ち着く冬場に行っています。

チャグチャグ馬コの装束は良質の麻を使った手編みで、製作工程の全てが手作りで行われます。

染料は紫紺染めや草木染め。 麻は光沢があり、まとわりつかない特徴があり、丈夫で長持ちすることから、代々受け継がれて来ました。

装束の配色はそれぞれの家で趣向が凝らされ、昔ながらに一つ一つ長い月日をかけて丹精込めて作られます。

チャグチャグ馬コは手作りの祭りでもあるのです。

出典:chaguuma.com/costume

コロナ禍で「チャグチャグ馬コ」は2年連続で中止になり、昨年の再開から二年目の今年。

今年も天気に恵まれ、暑すぎもせずホントに良かったです。

子供たちの元気そうな様子にホッとしました。

チャグチャグ馬コの唄

馬コうれしか お山へ参ろ
金のくつわに 染め手綱
「チャグチャグ馬コが もの言うた じゃじゃもいねから お入(へ)れんせ」※後述

去年祭りで 見染めて染めて
今年ゃ背中の 子と踊る
「チャグチャグ馬コが物言うた じゃじゃもいねから お入(へ)れんせ

俺らが馬コは 三国一よ
嫁コしゃんと引け 人が見る
「チャグチャグ馬コが物言うた じゃじゃもいねから お入(へ)れんせ

五月(さつき)柳の 北上川へ
鈴コチャグチャグ 音がひびく
「チャグチャグ馬コが物言うた じゃじゃもいねから お入(へ)れんせ

※後述「じゃじゃ」は、父説と母説(舅と姑)とがあり、判別が難しい。以降は「いないからお入りなさい」の意。

この民謡が流れるからこそ、チャグチャグ馬コの行事が盛り上がります。

民謡歌手による唄の動画もありましたが、若い世代にも新しい感覚で「チャグチャグ馬コの唄」が受け継がれていけばいいなと思い、ノリのいいミュージシャンによる演奏動画を載せてみました。

歌詞を聞きながら、馬コたちの背景にあるストーリーを想像するのもまた楽しいです。

普段から歌って踊れるよう広まればいいですね。

馬コたちと暮らしていた南部曲り家

・南部曲り家とは、馬と人間が同じ茅葺き屋根の下で暮らす母屋と馬屋が一体化したL字型の住宅のことです。

岩手では、遠野の千葉家の曲がり家、盛岡手作り村の曲がり家、滝沢市大沢地区藤倉邸の曲がり家などが保存されています。

他にも、南部曲がり家は旧南部藩領の各地に保存されているものがあります。

今日も、チャグチャグ馬コを見た帰りに、滝沢市の南部曲り家に立ち寄り、写真撮影をしてきました。

他にも何人かの人がいて、管理人さんと話しをしたりしていました。

人間のそばに馬を住まわせ、大事に育てて一緒に農作業をしてきたからこそ、愛情も湧き、「チャグチャグ馬コ」の伝統行事が生まれたのでしょう。

私の子供の頃の実家は、馬ではなくすぐそばで牛を飼っていました。(余談;’∀’)

まとめ

「チャグチャグ馬コ」を皮切りに、岩手では各地で祭り行事が続きます。

盛岡市のさんさ踊り、北上市の郷土芸能祭り、雫石町のよしゃれ祭りなど、どれも

心惹かれる祭りです。

できるだけ足を向けて、「※イーハトーブ」岩手の夏を満喫したいと思います。

ところで、いつも道すがら見かけていた二頭のポニーの姿が、今日はありませんでした。

綺麗な装束を着せてもらって、チャグチャグ馬コの行列の中にいたのかもしれません。

 

※イーハトーブとは宮沢賢治の造語で、賢治の心の世界の中の「理想郷」を指す言葉として、使われています。

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